倒産と破産と民事再生
一.民事再生の全体像
倒産と破産と民事再生
会社が債務を返済できない状態になることを一般に倒産といっていますが、倒産には大きく「精算型」と「再建型」の手続きがあります。
精算型の手続とは、会社が事業を停止し、財産を処分して、その代金を債権者に分配するものです。清算型の手続には破産などがあります。
再建型の手続とは、債務の一部免除や分割払などで債務の負担を軽減し、事業を継続しながら会社の再生を図っていくものです。再建型の手続の中心的なものに、民事再生手続と会社更生手続があります。
民事再生の目的は、「経済的に窮境にある債務者について、債務者と債権者の権利関係を調整し、債務者の事業または経済生活の再生を図ること」(民事再生法1条)です。つまり、債務の減額や返済期間の延長などによって債務の負担を軽くし、同時に経営改革を進めていくことで、会社の再生を図っていくのが民事再生手続なのです。
民事再生と会社更生
債務の負担を軽減し、事業を継続しながら会社の再生を図っていく再建型手続の主なものとして、会社更生手続と民事再生手続があります。会社更生手続と民事再生手続の主な違いを比較すると、次の表のようになります。
| 民事再生 | 会社更生 | |
| 対象 | 全ての自然人・法人 中小企業を主に対象。 | 株式会社のみ。 スポンサーの存在が前提であり、長期間の手続に耐えられる資金力のある、大企業に限定。 |
| 再生の担い手 | 今の経営陣は引き続き経営にあたる。 財産の処分等は監督委員が監督する。 | 管財人がおかれ、経営権や財産の処分権を持つ。 いまの経営陣は原則退任する。 |
| 租税の扱い | 租税は再生手続に関係なく、随時返済しなければならない。 | 租税も更生手続に含まれ、手続が開始されると弁済してはならない。 |
| 担保権の扱い | 担保権のついている債権は、再生手続における債務軽減の対象にならない。 担保権は、再生手続が行われていても、実行できる(但し、3ヶ月程度は競売手続中止命令が及ぶ。) | 担保権のついている債権も、再生手続における債務軽減の対象になる。 担保権は、再生手続が開始されると実行できない。 |
| 株主の扱い | 株主の権利は維持されるのが原則。 | 100%減資が前提で、既存の株主は権利を失う。 |
| 必要な債権者等の同意 | 債権者の過半数かつ議決権総額の2分の1以上の債権者の同意があればよい。 担保権者や株主は決議に参加しない。 | 議決権総額の3分の2以上の債権者の同意が必要。さらに担保権者は更生計画の内容に応じて4分の3~全員の同意が必要。 株主も決議に参加する。 |
つまり、会社更生は「担保権の実行が阻止されるなど強力な効力があるが、同意の要件など手続全体が厳格であり、かつスポンサーがつくことが前提で、大企業を対象にした手続」といえます。
一方民事再生は 「担保権の実行を阻止する制度がないなど効力はやや弱いが、同意の要件が緩和されるなど手続全体が比較的簡易迅速で、かつ今の経営陣が経営を続けることを 基本とし、主に中小企業を対象にした手続」といえます。しかしマイカルのように大企業でも民事再生手続を使うことがあり、双方のメリットをよく比較して最 適な手続を選択する必要があります。
民事再生手続の流れ
民事再生の大まかな手続の流れは次のようになります。
(1)申立
裁判所に必要な書類を提出して「申立」を行うことから手続は始まります。しかし申立の前に十分な事前準備が必要です。
(2)監督委員の選任
監督委員とは、財務内容に影響を与える行為の監督や、財産の調査などを行うため、裁判所から選任されます。
(3)開始決定
手続の開始が決定されるまでの間に、従業員や債権者への説明などを行っていきます。
(4)再生計画案提出
債権者との打ち合わせを経ながら、再生計画案を作成し提出します。再生計画では債務をどのように整理するのか、今後の収支計画や資金計画はどのようなものかなどを記載します。
(5)債権者集会・認可決定
債権者集会で出席者の過半数でかつ議決権の総額の2分の1以上の債権者の賛成が得られれば、再生計画案が可決され、直ちに裁判所は民事再生の認可を決定します。
申立から民事再生の認可が下りるまでの期間の目安は次のようになります。
| 手続 | 申し立てからの日数(目安) |
|---|---|
| 申し立て・予納金納付 | 0日 |
| 監督委員選任 | 0~2日 |
| 開始決定 | 2週間 |
| 再生計画案提出 | 2ヶ月 |
| 債権者集会・認否決定 | 5ヶ月 |
このように手続はかなり迅速に進みます。この短い期間に債権者を説得し再生計画を立てていくことは、時間との闘いでもあります。
民事再生手続の様々な利用法
民事再生は、基本は債務を整理した上で、会社が自分自身の力で事業の再生を図っていく形を想定しています。しかし、それ以外にも様々な利用の仕方があります。代表的なのは次のようなケースです。
(1)ソフトランディング
最終的には会社を清算しようと考えている場合でも、直ちに事業全てを廃止すると、売掛金の回収が困難になるなど、かえって取引先・債権者に迷惑がかかるような時に、民事再生を利用しつつ事業を順次縮小していくことがあります。
(2)営業譲渡
最終的には営業譲渡による解決を考えている場合でも、会社に多額の債務がある と円滑に手続が進まないことがあり、民事再生手続を利用して債務を整理し、手続の中で営業譲渡をすることがあります。民事再生法では手続開始後に裁判所の 許可を経て営業譲渡できることが定められています。
民事再生を申立てると経営者はどうなるか
民事再生では今の経営者は退陣することなく引き続き経営にあたっていきます。これは民事再生の大きな特徴の一つです。
ただし、申立後の不動産の譲渡など一定の行為を監督委員の同意なしに行った場合などは、保全管理人が任命され、経営者が経営権を失います。また経営者が経営を継続することが不適当だといえる場合にも、保全管理人が任命されることがあります。
民事再生の費用
民事再生にかかる費用としては以下のようなものがあります。
(1)予納金
申立をする時に裁判所へ納める金額です。監督委員の報酬や官報への公告費などに用いられます。その金額は負債の総額を基準に、全体的な事情を総合的に考慮して決められます。その目安は以下のようになります。
| 予納金基準額(目安) | |
| 負債総額 | 予納金基準額 |
| 5000万円未満 | 200万円 |
| 5000万円~1億円未満 | 300万円 |
| 1億円~5億円未満 | 400万円 |
| 5億円~10億円未満 | 500万円 |
(2)弁護士費用
最低で予納金と同額が一般的です。弁護士によって様々なので詳細はご相談ください。
担保のついている債権の取扱
民事再生では、 手続の開始があっても担保権の実行は自由に出来ることになっています。しかし担保権が実行されて工場などを失ってしまうと、事業の継続が出来ません。その ため担保権を有する債権者とは「別除権に関する協定書」(別除権というのは担保権のことを指します)を締結し、少なくとも再建中は担保権の実行を猶予して もらうなどします。
具体的には、協定書で「担保物の評価額3000万円を、分割して、5年間で担保権者に弁済する。担保権者は担保権の実行をしない。」などの形で定められます。これはつまり、担保物の評価額を支払うことで、別除権の受け戻しを行うことになります。
その他、一定期間は担保物の使用を続けるが、その後は売却して代金を弁済にあてるというスキームをとることもあります。
ただ、申立前に競売が申し立てられそうになっている場合については、民事再生の申立によって競売手続が中止され、競売を免れることが出来ます。しかし中止の効力は数ヶ月間に限定されているため、手続の中で協定書の締結に向けて交渉していかなければなりません。
なお、民事再生手続には「担保権消滅請求」制度が定められています。これは工場など事業の継続に必要不可欠な財産については、財産の評価額に相当する金銭を裁判所に納めることで担保権を消滅させることが出来るというものです。
免除益に対する課税とは
再生計画において債務の免除を受けると、その免除額が免除益として取り扱われ、課税を受けます。税額は数十%と高率で、もともと返済が困難な債権の数十%を納税するということは相当困難であり、これが民事再生手続を成功させるネックになっています。
そのため「現在の債務の70%を弁済した時点で、残りを免除する」という形で再生計画を書き、免除益が発生するのを再生計画を遂行した後にすることで、再建を果たした後に納税するようにしたり、あるいは、「分割弁済をするたびに8%ずつ免除する」として、免除益が一度に発生しないようにし、税額を分割払いできるようにするなど、再生計画を工夫します。
申立までに以降の運転資金を準備しなければならない
民事再生を申し立てると、金融機関からの運転資金の借入が出来なくなります。また信用取引も出来ません。そのため当分の間資金繰りに困らないように、十分な運転資金をなるべく現金で用意しておく必要があります。
また借入のある金融機関の預金口座については、申立があると、預金は相殺を受け、また口座が凍結され引き出しが出来なくなることがあります。そのため申立までに預金の回収や、売掛金の振込口座の変更を行う必要が出る可能性があります。
民事再生の問題点
このように、民事再生にはさまざまなメリットがある一方で、問題点もあります。
(1)売り上げを維持することが難しい
倒産というように捉えられてしまうため、信用が落ち、どうしても売上が減少してしまいます。また信用取引が難しくなるなど資金繰りも大変になります。
(2)担保権を実行されてしまう
上で述べたように、担保権に対しては、手続外の交渉で「担保権に関する協定書」を締結するなどして実行の阻止を図るのですが、うまくいかないことも多いです。
(3)債務免除益に多額の税金が発生する
上で述べたように、債務の免除を受けると、免除額の数十%の税金がかけられます。
(4)個人保証から逃れられない
民事再生手続で債務を軽減しても、保証人の負担は軽減されません。そのため経営者が個人保証をしている場合は、経営者も自己破産するか民事再生を行う必要があります。
民事再生に必要なこと
民事再生をするには、これらの問題点をクリアしなければなりません。そのため次のような要件が求められます。
(1)営業黒字が見込めること
弁済原資を捻出するためには、少なくとも営業黒字が確保できなければなりませ ん。再生手続を始めると、信用が低下するため売上は今以上に低下することが考えられます。その中で弁済原資を捻出できるだけの黒字を維持し、かつ事業を伸 ばして会社を再生につなげるには、高い技術力があるなど個性を持った会社であるか、スポンサーがつくことが必要といえます。
(2)経営者の気力
再生手続は短期間のうちに債権者は従業員とタフな交渉をこなし、かつ日常の業務も続けなければなりません。また債権者への説明などには従業員にも協力してもらうことになります。全社が一体となって再生手続に立ち向かえるだけの結束力が求められます。
経営者の気力と求心力が何より求められます。
(3)当面の資金繰りを含めた費用の準備
上で述べたように、当面必要な運転資金を現金で用意する必要があります。そのことまで考えると再生には相当の費用が必要になります。この費用を用意できるかも、民事再生を成功する鍵になります。
二、民事再生の手続
民事再生手続のタイムテーブル
上でも民事再生手続の大まかな流れを説明しましたが、ここではもっと詳しい手続のタイムテーブルを見てみましょう。
| 手続 |
申立日からの日数 |
| 申立・予納金納付 監督委員選任 第1回打ち合わせ期日 開始決定 債権届出期限 財産評定書・報告書提出期限 再生計画案草案提出期限 第2回打ち合わせ期日 認否書提出期限 一般調査期間 再生計画案提出期限 監督委員意見書提出期限 債権者集会・認否決定 認可決定の確定 |
0日 0~2日 2週間 15日 1ヵ月半 2ヶ月 2ヶ月 2ヶ月 9週間 2ヵ月半 3ヶ月 3ヶ月 5ヶ月 6ヶ月 |
以下では、この手続の流れに沿って、個々の手続を詳しく見ていきましょう。
[1]申立前から申立まで
民事再生を申立てられる条件
民 事再生を申立てられる条件としては、(1)「債務者に破産の原因たる事実の生ずるおそれがあるとき」または、(2)「債務者が事業の継続に著しい支障を来すことな く弁済期にある債務を弁済することが出来ないとき」とされます。特に(1)について、「破産の原因」というのは資金繰り困難による支払停止や債務超過をいいま すが、債務超過に陥っていなくてもその「おそれ」があれば民事再生を申し立てることが出来るのです。
つまり、民事再生は申立の要件を破産より緩和することで、完全に破産する前に早期に会社再生ができるようにしているのです。
申立までに運転資金や費用をどのような形で準備しておけばいいですか
まず申立費用については、申立時に現金の形で直ちに使用可能な状況になければいけません。引き出すのに小切手が必要な当座預金などに置いておくことは避けるべきです。普通預金も当日に引き出すとなると時間的な制約があるので、余裕を持って現金化して保管しておくべきです。
申 立後は、金融機関からの運転資金の借り入れは不可能になります。また信用が落ちるため、信用取引も難しくなります。仕入れなどはいままでのように手形によ る支払いが出来なくなり、現金決済が原則となり、支払期日も短くなります。一方、売掛金の回収についても、二重払いの危険を避けるため当面弁済を留保する 売り掛け先が多いと思われます。これらを勘案して資金繰計画をたて、当面の運転資金を現金の形で用意しなければなりません。
借入のある金融機関の預金口座は、申立を行うと、申立前の預金は借入金と相殺されてしまいます。また申立後の預金も口座が凍結され引き出せなくなります。そのため現金の形で用意したり、借入のない金融機関に移す必要があります。
申立に必要な書類は何ですか
申立には様々な書類が必要になりますが、その中でも重要なのが資金繰表と事業計画です。
資 金繰表は過去1年分と、申立後6ヶ月分のものが必要になります。申立後の資金繰りは今まで通りにはいかない部分が多く、予測は大変です。しかし申立後に備 え当分の間の運転資金を準備しておかねばならない点からも、出来るだけ正確に資金繰りを予測することが必要になってきます。
事 業計画には、財務体質の改善の方法やこれからの事業のあり方を記します。そこではどうやって返済の原資を確保し、会社を再生していくかを示さなければなり ません。弁済原資を捻出しながら事業を継続していくためには、少なくとも減価償却前で営業黒字を維持することが求められます。いかにして売り上げを伸ばし ていくか、リストラなどコスト削減の計画はどのようなものか、営業譲渡はするのかなどを考えなければなりません。時には抜本的な経営の方向転換が必要にな ることもあります。
申立前の仕入れやリース料の支払いはいつまで出来ますか?
<仕入れ>
申立前の仕入れや発注は取り込み詐欺のような形になってしまう可能性があるので、出来るだけさけた方がいいです。
<受注>
民事再生は営業を継続することが前提なので、受注は申立前日でも行ってかまいません。
<家賃・リース料>
事業の継続に必要不可欠な物件ならば、賃料やリース料の支払いが滞ると債務不履行解除を受けてしまうので、支払うべきです。ただし、申立後も弁済禁止の仮処分から除外されることが多いので、資金繰りがつかない場合は申立後に支払うこともあります。
<買掛金>
資金繰りがつくのであれば、支払ってかまいません。
申立をするために取締役会決議は必要ですか
民事再生の申立には取締役会決議が必要です。
申立前に株主に説明する必要がありますか
特にオーナー会社でない場合には混乱を招く可能性があるので、基本的に説明する必要はありません。ただし、閉鎖会社で増資を予定している場合には、株主総会の特別決議が必要になるので、事前に株主に説明して協力を仰ぐこともあります。
大口取引先や金融機関への事前の根回しは必要ですか
情報漏洩による混乱の危険など、一概にはいえませんが、場合によっては根回しをすることもあります。
民事再生手続きの管轄はどこですか
登記簿上の法人所在地の地方裁判所が管轄になります。子会社の管轄は親会社の管轄と同じになりますが、既に子会社の再生事件が係属している場合には、親会社は、子会社の再生事件が係属している裁判所に申し立てることも、親会社の本来の管轄裁判所に移送することも出来ます。
[2]監督委員の選任
監督委員の権限とはどのようなものですか
監督委員は再生手続が適正に行われているかを後見的に監督するため裁判所から任命されます。東京地裁では必ず監督委員が選任されます。監督委員の権限は以下のようなものです。
【1】債務者の一定の行為に対する同意権
申立後は一定の行為については監督委員の同意がなければ出来なくなります。その行為とは以下のようなものです。
(1)不動産の処分・担保権の設定・賃借など
(2)売掛金・貸付金など債務者の債権の処分
(3)財産の譲受(仕入れや通常の業務での譲受は除く)
(4)金銭の借入・手形の割引など
(5)貸付
(6)別除権の受け戻し
などです。監督委員の同意なしでこれらの行為を行うと無効となります。
【2】裁判所の許可に代わる共益債権化の承認
仕入れなど事業の継続に必要な行為に伴って生じた債権は、裁判所の許可を経て共益債権とされることで、再生手続開始後も随時弁済することができます。この共益債権化について裁判所の許可にかわって、監督委員が承認をすることができます。
【3】否認権
裁判所は、特定の行為について、監督委員に否認権を付与することが出来ます。否認権が付与されると監督委員は必要な範囲で再生債務者の財産の管理処分権を得ます。
否認権の対象になる行為は、不当に財産を処分するなど、債権者を害する行為をしたり、担保を供与するなど特定の債権者を優遇して、債権者間の公平を害する行為等です。利害関係人の申立または職権で裁判所が監督委員に否認権を与えます。
【4】手続全体への影響力
監督委員は、裁判官に代わって債権者と接触し、会社を訪問するなどして、様々 な情報を裁判官に報告する役割を負っています。また、再生計画案の可否について、債権者集会に先立って意見書を提出します。一般に監督委員が不審を抱くと 手続の進行がスムーズにいかなくなります。そのため監督委員との信頼関係の確立が大切になります。
[3]申立後から開始決定までに行うこと
再生手続開始決定による弁済禁止
再 生手続の開始が決定されると、開始前までに生じた債務については弁済が禁止されます。こうすることで一部の債権者が抜け駆け的に弁済を受けることを防ぐの です。これに反して一部の債権者に対し弁済を行うと、その弁済が無効になるだけでなく、再生計画が不認可となるおそれもあります。
ただし、債権者による債務免除や相殺、下請け企業への支払の一部、少額な債権については、例外的に弁済が認められます。下請け企業への支払は無制限に認められるわけではなく、連鎖倒産を防ぐために必要かどうかを検討しながら支払います。
官報・商業登記簿謄本への掲載
再生手続の開始が決定されると、そのことが官報に掲載されます。
また、商業登記簿謄本にも再生手続きの開始があった事、監督委員の氏名などが記載されます。
管理命令が発令されてしまう場合
民事再生は、会社更生と違って、今の経営陣が手続開始後もそのまま経営にあたり、会社の再生を目指していくことが原則です。
しかし、民事再生手続でも希望すれば会社更生のような管財人を選任し経営権をゆだねる方法を選択する事ができます。民事再生手続で管財人を選任する命令のことを「管理命令」といい、管理命令が発令されると管財人に経営権や財産の管理処分権が移転します。
また、債権者の多数が、今の経営陣が経営に当たることに反対している場合などは、関係者の意向に反して管理命令が発令される場合もあります。
手続開始後の家賃・買掛金などは払えるのか
再生債権とは、再生手続開始前に発生した債務のことをいいます。先に述べたように、これは手続が開始すると原則として弁済できなくなります。従って、手続開始前の買掛金などは返済してはいけません。
一 方で、民事再生では手続が開始されても事業は従前通り継続されています。そのため手続開始後も買掛金や従業員の給料などの債務が発生します(但し、実際に は信用取引は殆ど出来なくなります)。また裁判所費用や監査委員の報酬など、手続を遂行するために必要な費用もあります。
こ のような、手続開始後に発生した債務で、手続の遂行に必要な費用や、事業を継続するために必要な費用などのことを共益債権といいます。共益債権は再生手続 に関わらず、随時弁済する事が出来ます。また再生債権と違い、共益債権には債権者は仮差押え・強制執行などができます。
なお、申立から開始決定までの間に発生した債務も共益債権とする事が出来ます。
手続開始前の未払給料や税金の滞納は返済できるのか
従業員の給料などは先取特権があるので、手続開始前のものであっても、再生手続きに関わらず随時返済することが出来ます。
また税金や健康保険料なども、再生手続きに関わらず随時返済する事が出来ます。このような税金や従業員の給料などのことを一般優先債権といいます。
逆に言えば、一般優先債権は再生手続きでも減額などは受けられず、全額弁済しなければならないので、注意が必要です。特に租税の滞納処分については、民事再生法には強制執行などを回避する制度がありません。
リース物件はどうなるのか
リー ス物件が事業継続に必要な物なら、リース料を支払い続けないと引き上げられてしまいます。事業継続に必要な物であれば、共益債権または別除権の受け戻しな どの形で、リース料の支払を継続することができます。月々のリース料の支払が困難な場合は、いったんリース契約を解除し、再リース契約を結んでリース料の 減額を交渉するなどします。
ま た滞納分のリース料は、そのリース物件が引き上げられては困る場合には、共益債権として取り扱って、返済する事が出来ます。不要な物件である場合には、別 除権付再生債権として取り扱って、リース物件を引き上げてもらうことになります。リース物件の評価額よりも多い未払分については、再生債権として取り扱わ れます。
リース料が滞納しておらず、かつその物件が不要な場合は、業者に解約の交渉をするなどの対応をすることになります。
電気・ガス・水道代は支払っていいのか
手続開始後でも、光熱水道代は、事業の継続に必要な物なので、共益債権となり支払を続ける事が出来ます。一方、手続開始前の未払の光熱水道代は、手続開始後は、原則として支払ってはいけません。
新たに仕入れをしてもいいのか
商品の仕入れなど、日常の業務に属するものであれば手続開始後も続けて構いません。代金も支払うことができます。但し資金繰りには十分注意し、新規の仕入れが原因で再び破綻することがないようにしなければなりません。
新たに借入はできるのか
手続開始後は勝手に金銭の借入を行ってはいけません。監督委員の同意を得る必要があります。ただ、事業の継続に必要不可欠な借入であるなら、同意は得られると思われます。
受取手形を割り引いてもらってもいいのか
手続開始後は、勝手に手形を割り引いてもらってはいけません。監督委員の同意を得る必要があります。特に、街金などで極めて高い割引率による割引を行っているところがあるので、監督委員が割引率などをチェックしてから同意をすることになります。
税金や給料・役員報酬を支払ってもいいのか
税金は、手続開始後も支払わなければなりません。
従業員の給料やボーナスも、手続開始後でも支払うことができます。但しボーナスを支払うと債権者が反発することがあるので注意が必要です。
役員報酬は原則として、手続開始後は支払ってはいけません。
仕入れ先に支払っていい債務と支払ってはいけない債務の区別の方法は
原則として、納品日が手続の申立日よりも後の仕入れについては支払うことが出来ます。納品日が手続の申立日よりも前の仕入れについては支払うことが出来ません。
債権届出とは
民事再生手続には債権届出という手続があります。これは手続の開始が決定された後に、債権者が保有する債権の額などを届け出るものです。ここで届け出られなかった債権は原則として再生手続に参加できず、免責とされます。
なお債権届出期間内に相殺することができる債権については、原則として相殺することができます。
こ のように債権届出とは債権者が行う手続ですが、取引先などで債権届出の方法が分からず、届出をしない所が出てくることがあります。後に述べるように、再生 計画が認可されるためには債権者の過半数の賛成が必要なので、長年の取引先などは賛成票を確保するためにも再生手続に加わってもらう必要があります。再生 債務者としての誠実な態度が求められます。
認否書・一般調査期間とは
認否書とは、債権届出で届けられた債権に対し、債務者がそれを認めるか否かを表明するものです。また、債務者が債権の存在を知っているが、債権者から届け出られていないという場合は、債務者は「自認債権」として認否書でそれを届け出なければなりません。
認否書が提出されると、それに不満のある債権者は異議書を提出します。この異議書の提出期間を一般調査期間といいます。
認否書で債務者が認め、異議書が提出されなかった債権については、調査期間の経過とともに債権の額・内容が確定します。
一方、認否書で債務者が認めなかったり、あるいは異議書が提出された債権については、債権者が査定の申立をして査定の裁判が行われます。査定の裁判は簡易な手続によるもので、これでもなお不服がある場合には通常の訴訟を起こすことになります。
また、異議が出されたり、認否書で認めなかった債権が、再生手続開始当時に訴訟に継続していた場合には、債権者が中断していた訴訟の継続を求め、再開された訴訟の中で債権の額・内容が確定されることになります。
財産評定とは
適正な再生計画を立てるためには、債務者の財産の状況を正しく把握しなければなりません。しかし倒産した会社では、帳簿書類が財産状態を正確に表していないことが多く、この手続で改めて財産を正しく評価するのです。
先 に述べたように、民事再生で返済する額は、破産によって会社を生産した時に債権者が受け取れる額よりも多くなければいけません。そのため債権者にとって は、もし仮に会社を生産したらいくら受け取れるのかが重要になります。従って、財産評定では財産を処分価格で評価します。なお、有価証券なら時価、棚卸資 産ならスクラップ価値など、評価の方法が財産の種類毎に決められています。
財産評定では公認会計士や税理士にも依頼することになります。
再生計画案とは
再生計画案とは、借金をいくら減額し、どのように返済していくのかなど、弁済の計画を示したものです。具体的には以下のような事項を記載します。
(1)再生債権者の権利の変更と弁済の方法
(2)再生計画の基本方針
(3)別除権者の権利に関する条項
(4)共益債権・一般債権の弁済方法
(5)債務保証に関する条項
(6)弁済資金の調達方法
などがあります。
東 京地裁など、一般的に、再生計画案は正式なものを提出する前に、まずその「草案」を提出します。草案の提出時期は、債権届出の後、財産評価と同じになりま す。草案の提出段階では、まだ異議書の提出などを経ておらず債権の内容が確定していないので、何割減額するのか、今後の営業計画はどうするのか、などその 概略のみ示すことになります。
草案を出したら、大口債権者に対してその説明に回り、その意向を確認します。その上で、正式な再生計画案を作成するのです。
債務はどの程度軽減されるか
再生計画案での弁済方法は具体的には次のように定められます。
「元本50%以上の再生債権については、元本の50%に相当する金額並びに利息の全額について免除を受ける」
「元本50万円を超える再生債権については、免除後の金額を次の通り分割して弁済する。第一回 平成X年X月X日 免除後の金額のY%に相当する金額 第二回~」
具体的に何割の免除を受けられるのか、弁済期間はどの程度かは、ケースバイケースで大きく変わります。金融機関など債権者は確実に実行できる再生計画を求めてくるので、自分が確実に返済できるのはどの程度かを考え、弁済計画を決めていきます。
但 し、免除の割合や弁済期間には制限があります。まず再生計画での弁済額は、仮に破産した時に債権者が受け取れる金額よりも多くなければいけません。破産し た時よりも少ない金額しか弁済できないのであれば、債権者にとって民事再生を選択するメリットがないためです。一方で、再生債権の他にも共益債権や、営業 を継続する上での日々の取引債務・給料など様々な支払をこなしながら、かつ再生債権を弁済できなければなりません。つまり、再生債権よりも優先すべき支払 をこなしてなお、破産した時に債権者が受け取れる金額よりも多くを弁済できるといえないと、再生計画の認可は下りないのです。
次に、弁済期間の制限ですが、弁済期間は認可の決定から10年以内でなければなりません。但し、開発業者など10年後に特に収入が見込めるような、特段の事情がある場合には、延長することが出来ます。
債 務の免除など債権者の権利の変更は、各債権者の間では平等でなければなりません。しかし平等といっても、形式的に同じ弁済率にしなければならないというこ とではなく、実質的な平等であればいいので、一定の場合については権利の変更に他の債権者と差をつけることも出来ます。具体的には、
(1)不利益を受ける債権者の同意がある、または、(2)少額の債権
の場合です。特に少額の債権については、「50万円以下の債権は全額弁済する」など、有利に取り扱うことが認められています。
また、
再生計画で清算を選択することは出来るか
再生計画は、本来的には、今の企業形態をそのまま維持して事業収益から債務を分割弁済していく形が基本です。
しかし再生手続を開始してみてやはり再生の見込みがないと分かった場合に、破産手続を最初からやり直すのは不経済です。従って、会社を清算する再生計画も裁判所で認められています。この場合は、再生計画では債務者の資産を処分して、処分代金を弁済にあてることを定めます。
再生計画で営業譲渡を選択することは出来るか
民 事再生を申し立てると事業の劣化が起こることもあり、事業再生の方法として、営業譲渡をして譲渡代金を弁済にあて、再生会社自体は清算してしまうという方 法も考えられるでしょう。そのため営業譲渡を定める再生計画を立てることも可能です。この場合、債権者集会で営業譲渡への可否を問うことになります。
もっ とも、事業の劣化を考えれば、再生計画によらずにもっと早期に営業譲渡した方が望ましいといえます。そのため民事再生法には、再生計画を立てることなく、 裁判所の許可と株主総会の特別決議を経れば営業譲渡ができるスキームが設けられています。営業譲渡を行う場合は、この再生計画を立てないスキームの方がよ く利用されています。
この時、裁判所は許可を出す前提として債権者の意見を聞きます。この場合債権者の同意までは求められませんが、大多数が反対するような場合は、許可がおりない可能性が高いです。
事業計画とは
事業計画には、(1)再建方法(企業維持・清算・営業譲渡)、(2)各部門の存廃、(3)不動産の処理、(4)リストラ、(5)今後の財務予測(売上・原価・利益などの予測)、(6)弁済資金の予測と弁済計画、などを記載します。
財 務予測については、あくまでこれまでの実績値に基づいたものでなければいけません。民事再生を申し立てるとむしろ売上は減少するのであって、今後数年間で 爆発的に売上が伸びるようなことは期待し難いといえます。説得力のある事業計画にするためには、実績値に裏付けられた明確な根拠と、費用の細目にわたる精 緻な分析を伴わなければならないといえます。
売上を大幅にのばすことが難しいとなると、部門の廃止やリストラなど大胆な経営改革をする必要も出てきます。しかしリストラを行えば、退職金の支払が生じ、一時的には資金繰りを圧迫することにもなります。
弁済計画は各債務者毎に作成することが多いです。資金繰り予測表などによってどのように弁済原資を捻出するのかも同時に示す必要があります。
減資や増資は必要か
民事再生では原則株主の権利の変更は行いません。
た だし、スポンサーに出資を求める場合に会社が債務超過であると、誰も出資してくれません。そこで債務超過を解消するために減資をする必要が出てきます。通 常減資を行うためには商法上株主総会の特別決議などの手続きを経なければなりませんが、再生手続とは別に商法上の手続をするのは面倒です。そこで減資につ いては再生計画に減資の条項を盛り込めば、株主総会の特別決議なしで行えるようになっています。
再 生計画によって減資ができるのは債務超過の場合のみです。まず財産評定が終わった時に裁判所に減資の許可の申立をし、裁判所の許可を受けたら、その旨株主 に送達するとともに、減資の条項を入れた再生計画を作成します。減資の方法としては通常の商法上の減資と同様、株式の消却と株式の併合があります。
ス ポンサーの出資を受ける場合は、減資と増資を一体として行わねばなりませんが、増資は商法上の手続をする必要があります。そのため、減資を定める再生計画 案を提出するとともに、取締役会の新株発行決議・公告・払込などを進めていきます。定款に株式の譲渡制限を定めた会社であれば、第三者割当増資をするには さらに株主総会の特別決議が必要です。
債権者集会の実際
再生計画案は債権者集会で可決されることで裁判所の認可を受けます。債権者集会で可決されるためには、債権者の人数の過半数かつ議決権の総額(つまり債務の総額)の2分の1以上の債権者の同意が必要です。
債 権者集会は投票を行う場で、通常はあまり討論などは行われません。債権者集会は裁判所が主催しますが、東京地方裁判所での債権者集会の運用を見ると、まず 裁判長がこれまでの経緯を説明し、監督委員が意見を述べます。その後質問を受ける時間が設けられていますが、あまり長い時間はかけず、すぐに投票に移りま す。投票が終わると書記官が直ちに集計し、可決されればその場で裁判長が再生計画の認可を宣言して、債権者集会は終了します。ここまで30分程度です。
債権者集会までに行うこと
再 生計画案の提出から債権者集会まで通常2ヶ月ほどあります。この間に債権者の説得を行わねばなりません。もっとも金融機関など大口の債権者に対しては、再 生計画案の作成段階から骨子を説明し、その意向を反映しながら計画案を作成してはいますが、交渉がうまくいっていない場合などはなお粘り強い交渉が必要に なります。
一 方、取引先などの債権者は、取引が継続することを望むので賛成が得られやすいです。そのため取引先などについては出来るだけ集会の前に、再生債務者に賛成 票を投じるよう委任する委任状を集めるようにします。また、集会当日に使う投票用紙(議決票)は事前に債権者に送付されますが、議決票が届いていれば、そ れに○を記入してもらって集めます。議決票や委任状を事前に提出した債権者は、集会にくる必要はありません。こうして、出来る限り集会の前に賛成票を確保 しておくようにします。
書面決議とは
債権者集会を開かず書面による決議を行う場合があります。ゴルフ場の再生など、債権者の数が多く、かつ裁判所から遠方に住んでいる人が多い場合などに用いられます。もっとも、例外的な手法で、通常は債権者集会を開きます。
債権者集会の前に再生計画案を修正できるか
債権者の説得をしていく中で、再生計画案の修正が必要になった場合は、債権者集会の当日まで、裁判所の許可を得れば再生計画案を変更することが出来ます。
債権者集会で可決されないとどうなるか
債権者集会で再生計画案が可決されなかった場合は、債権者集会の続行を申し立てます。期日の続行が認められると、再び債権者集会を開くことができるので、それまでに債権者との交渉を試みるのです。また裁判所の許可を得て再生計画案を修正することも出来ます。
申 立が認められるためには、債権者(議決権を行使したか債権者集会に出席した者のみ)の過半数か、議決権総額の2分の1以上の議決権を有する債権者の、いず れかが再生計画案に同意したか、あるいは、債権者集会に出席した債権者の過半数でかつ出席した者の議決権総額の2分の1以上の議決権を有する債権者が、続 行に同意する必要があります。
期日の続行は回数には制限はありませんが、最初の債権者集会から原則2ヶ月以内でなければいけません。
期日が続行できなかったり、続行してもなお否決された場合には、再生手続が廃止されます。手続が廃止されると、原則として裁判所によって破産手続に移行されることになり、破産宣告を受けます。
なお、再生手続の廃止があっても、債権届出から一般調査期間までの債権調査の手続は有効で、そこで確定された債権の額が破産手続でも用いられます。
再生手続が認可されると
再生手続が認可されると以下のような効果が生じます。第一に、認否書に記載された債権については、再生計画の定めに従って減額等の権利の変更を受けます。第二に、債権届出をせず認否書に記載されなかった債権については、失権し免責されます。
一方、担保権・保証人・物上保証人については、再生手続の認可があっても、従前どおり(つまり減額前)の責任を負います。担保や保証はもともと債務者が倒産した時に備えて設定されているためです。認否書に記載されなかった債権については保証人等も免責されます。
再生手続が開始されると、それ以前に開始された強制執行は中止され、訴訟手続は中断します。そして認可があると、強制執行は失効し、訴訟手続は再開されます。
なお、可決されてから認可の決定までには、官報への公告と即時抗告期間があるので、1ヶ月程度かかります。
返済の方法
再生計画の認可が決定すると、直ちに再生計画がスタートし、以後再生計画に沿って債務の返済を行っていきます。
再生計画の履行については、監督委員の監督を受けます。監督を受けるのは認可の決定から3年です。3年間は監督委員がちゃんと返済があったかをチェックします。
また、再生手続中の債権調査の手続を経て確定された債権額は再生債権者表に記載されますが、この再生債権者表は確定判決と同一の効力をもつため、再生計画の通りに返済していない場合は、債権者は強制執行をすることが出来ます。
共益債権や一般優先債権については、裁判所が必要だと認めた場合には、担保を提供させることがあります。
再生計画の返済が滞るとどうなるか
再生計画に定められた返済が滞ると、返済が終わってない債権の10分の1以上を有する債権者は再生計画の取消を申し立てることが出来ます。再生計画の取消が決定されると、再生計画で決めた債権の免除などが無効になり、債権 者は強制執行をすることができます。さらに、債務超過であるなど破産原因があれば、原則裁判所によって破産宣告をうけます。
その他、再生計画の遂行の見込みがないと裁判所や監督委員が判断した場合は、再生手続の廃止を受けます。再生手続が廃止されると、債権者集会で否決された時と同様、原則裁判所によって破産手続に移行され、破産宣告を受けます。
再生計画の履行が難しくなったが、再生計画を変更することは出来るか
一定の要件を満たせば、再生計画を変更することが出来ます。その要件は、(1)認可決定の確定から3年以内であること、(2)予想できなかった経済情勢の変化など止むを得ない事由で再生計画を変更する必要が生じたこと、です。
その手続は、変更によって不利益を受ける債権者だけを集め、当初の手続と同様に債権者集会を開き、決議を経ることになります。
売掛先から民事再生を申し立てることは出来ますか
債権者からも、債権額の大小に関係なく、申立が出来ます。その場合、債務者に破産の原因が生じているおそれがあることが必要です。申立の必要書類や費用は、原則として債務者と同じになります。