法人の事業再生


ご相談はお早めに

 昨今の不況のなか、昨年1年間で、ITJでは、約60社から事業を再建したいとのご相談をいただきました。ただ、なかには事業再生には手遅れの状況となって、破産のやむなきにいたった会社もあります。

 資金繰りが苦しくなってきた、金融機関からなかなか融資を得られない、売上げが落ち込んでいるなど、経営状態悪化の兆候があれば、なるべく早くご相談ください。


事業再生の手法

 事業再生の手法で主なものは以下の通りです。

裁判所を通すもの(法的整理)

会社更生

民事再生

中間的なもの

特定調停

裁判所を通さないもの(私的整理)

私的整理

M&A

会社分割


 以上のどれか一つを選択しなければならないわけではありません。民事再生の手続のなかでM&Aや会社分割を行うこともごく一般的です。ですから、事業再生の手法は、会社によって無数にあるといってよいでしょう。

 ITJでは、無数の選択肢のなかから、貴社の状況、スポンサーの有無、経営者のご希望やお考えに沿って最適なスキームをご提案致します。


裁判所を通す(法的整理)か通さないか(私的整理)

 法的整理は、私的整理に比べると時間と費用の側面でコストがかかり、また手続の柔軟性を欠き、さらに、倒産企業として公になることで経済的損失のおそれが生じるという短所があります。しかし、裁判所の関与によって手続が進行するため、手続の透明性や公平性が担保され、全債権者に対して法的拘束力を及ぼすことができるという長所があります。 

 そこで、法的整理が適しているのは、債権者をはじめ利害関係者数が多く、その調整も容易には進まないような場合だと考えられます。 

 一方、私的整理は、手続が柔軟で迅速に進む他、秘匿性があるため、事業を毀損するおそれがないという長所があります。しかし、裁判所が関与しないため、合意に達することのできなかった債権者と問題が生じる可能性があったり、手続において債権者同士の公平性が問題となったりするという短所があります。 

 そこで、私的整理が適しているのは、債権者数が少ない場合や債権者と債務者の間で信頼関係が保たれている場合など、利害関係者間の調整が比較的容易につく場合だと考えられます。 

 一般的には、法的整理と私的整理にはこのような特徴がありますが、もちろん会社の具体的状況によって様々なメリット・デメリットがありますので、まずはご相談ください。


自主再建を目指すには

 自主再建をめざす場合には、どのようなスキームを選択するにせよ、今後の事業収益や会社資産の処分代金を弁済資金とすることになります。事業収益が弁済原資の中心となるため、しっかりとした事業計画を立て、リストラを実施する必要があります。少なくとも、自主再建をめざすのであれば、このような努力によって収益力をあげることのできる見込みが必要と考えられます。

 また、自主再建の場合には、リスケジュールのみの私的整理で解決できればともかく、法的整理・私的整理いずれでも債務の免除をうけると、債務免除益に対して課税されるおこれがあり、この問題もクリアする必要があります。


スポンサーをつけた場合

 信用力あるスポンサーにめぐり合うことができれば、経営不振企業の失われた信用を補うことができ、事業の再生に不可欠な取引先との取引継続が可能となります。また、スポンサーによる資本注入や融資による資金の拠出により、運転資金が確保されることも、スポンサー関与型再建のメリットです。

 一方、スポンサーとしても、経営危機企業や倒産企業であれば、自社事業とシナジー効果のある債務者の優良部門を比較的安価な買収することができるので、短期間で事業の拡大や業務の補完を実現することが可能となります。 

 スポンサーをつけることによる短所は、現経営陣よりもスポンサーの意向によって今後の方針が決められることとなり、現経営陣にメリットがない事業再建となる場合があり、また、そのような可能性を危惧して、現経営陣の意思統一ができないこともあります。もっとも、今後の事業の展開について現経営陣のなかに不可欠な人材がある場合には、現経営陣の発言力が大きくなりますが、特定人に依存する事業であるとスポンサーとしても支援しにくい面もあります。


会社更生と民事再生

会社更生・民事再生の長所を簡単に挙げると、

大幅な債務のカットができること、

裁判所を通すため、任意交渉に応じない債権者でも手続にのせることができること、

手形の不渡りを回避出来ること(0号不渡りとなります。)。

株主総会の特別決議を経ずに事業譲渡を行うことができること、

があります。 



特定調停

 特定調停とは、民事再生法と同年の平成12年に施行された「特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律」に基づいて、裁判所の調停により債権者と個別に交渉をおこなうものです。

 会社の状況を開示して、裁判所で選任する調停委員から、支払いの繰り延べや担保の変更などを含めた調停案を出してもらうこともできます。

 特定調停といえば、多額の債務を負った個人が、自身で債務整理を行うために用いるというイメージがありますが、「債務超過に陥るおそれのある法人」もこの手続を用いることが可能です。

 この手続の長所は、

 会社更生や民事再生と異なり全債権者を対象とする必要がなく、信用不安を最低限に抑えることができること、

 既に差し押さえられている場合には、要件をみたせば強制執行を停止することができること、

 が挙げられます。

 逆に短所は、あくまで話し合いなので強制力がなく、債権者が強硬な姿勢にでると解決するのが困難なことです。


私的整理

 会社更生や民事再生などの「法的整理」と対比して、裁判所を通さずに債務の整理を行うことを「私的整理」といいます。

 私的整理には、様々な段階があり、対象とする債権者についても、銀行など金融機関のみを対象とするものから、買掛先なども含め全ての債権者を対象とするものまであります。

 また、着地点についても、債権者と支払いについて合意して事業を継続する自主再建型、事業譲渡などM&Aを行って債権者に一括で弁済する事業譲渡型、さらに資産処分代金で一括弁済して会社はたたんでしまう清算型と様々です。

 一般的な自主再建型の私的整理の手続は、私的整理の対象とする債権者に対して、債務の整理を行う旨の通知をし、場合によっては数度の説明会を開いて、経営組織の再編やコスト削減といった事業再生計画を提示しながら、債権者との間で、返済期限や返済条件を変更するリスケジューリング、債権の一部を放棄する債権放棄などについて交渉をしていくという流れになります。 

 私的整理の長所は、前述のとおり、特定調停と同様に全債権者を対象とする必要がなく、信用不安・事業価値の毀損を最低限に抑えることができること、裁判所を通さないため、費用が安くなることが挙げられます。

 私的整理の短所は、あくまで話し合いなので強制力がなく、債権者が強硬な姿勢にでると解決するのが困難なこと、担保権の実行や強制執行を阻止することができないこと、手形の不渡りを阻止することはできないことが挙げられます。 

 事業価値の毀損を最低限に抑えることができますので、事業譲渡のための譲渡会社の負債の処理には、債権者のコンセンサスを得られる限り最適であるといえるでしょう。

 もっとも私的整理→事業譲渡というスキームの場合、個別の契約移転の処理が必要となるため後述する会社分割よりも煩雑にはなります。


会社分割

 会社分割とは、1つの会社を2つ以上の会社に分けることをいいます。

 会社法上では、分割する会社が(分割会社)がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を既存の会社に承継させる場合と、分割会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を新設会社に承継させる場合があります。前者を吸収分割、後者を新設分割と呼んでいます。

 会社分割により、新設会社又は分割会社は、分割の対象となる「事業に関して有する権利義務の全部又は一部」を承継することになりますが、承継される債権債務は、新設分割計画または吸収分割契約に明記します。

 債務も原則として、債権者の同意なくして免責的に新設会社又は承継会社に移転します。 

 この会社分割を事業再生の手段として用いることもあります。これは、簡単にいいますと、会社に採算部門と不採算部門(採算支店と不採算支店)がある場合に、会社を分割し採算部門を生き残らせるというものです。

 うまくいけば、取引先に対する信用不安を引き起こすことなく、債務の整理をすることができますが、分割の方法や債権者との関係など難しい面もありますので、まずはご相談下さい。 

 また、M&Aのスキームとして、会社分割を行うこともあります。もっとも単純なのは、売却対象となる事業部門を新設会社として新設分割をおこない、当該新設会社の株式を売却するものですが、そのほかにも、事業の譲受会社を承継会社として吸収分割をおこない、対価として譲渡会社または譲渡会社株主に譲受会社の株式を充てる方法などもあります。これらの手段については、譲渡会社との今後の関係や資本構成をどうするかなども含めて検討が必要です。

 いずれにしても、M&Aの一環として会社分割をおこなう場合の利点は、買収しようとする事業の契約関係や、許認可をスムーズに引き継げる点があげられるでしょう。ただし、分割後の譲渡会社をどうするかという問題は残ります。


M&A

 M&A(Mergers and Acquisitions「合併と買収」)とは、企業買収の総称ですが、具体的な内容となると、吸収合併、吸収分割、株式交換、事業譲渡など、多様なスキームがあります。ここまでに代表的なスキームをいくつかご紹介致しましたが、その他にも無数に方法があります。

 会社・事業を売りたい、買いたい、いずれでも、ご要望に沿った最適なスキームをご提案致します。 

 M&Aを検討されている場合には、財務会計上のDDは公認会計士にご相談されることと思います。同様に、法的問題についてもきちんと専門家の意見を取り入れた方がよいでしょう。特に、譲渡会社の負債の処理、事業の法的リスクの検討や譲渡実行後の紛争防止は重要な問題です。ITJでは、売買当事者のアドバイザー・法務デューデリジェンスを行っています。 

 また、会社を売りたいという場合に、同業者や取引先だけではなく幅広く買い手を探したいという方には、ITJの人脈を活かしてスポンサーの紹介も行っております。 

 会社を買いたいという場合の、金融機関のご紹介・交渉もITJにお任せ下さい。